AED導入の社会的意義

なぜAEDが必要なのか? 心臓突然死で年間7万人が亡くなっている現状

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現在AEDが急速に普及していますが、その背景には何があるのでしょうか?浮かび上がってくるのは、年間数万人が心臓突然死で亡くなっているという現実です。

「なぜAEDが必要なのか?」そして「AEDが普及することで何が期待できるのか?」という点についてまとめてみました。

年間7万人が心臓突然死で亡くなっている

日本では年間に約10万人が突然死で亡くなっており、そのうち約7万人が心臓を原因とする心臓突然死で亡くなっていると言われています。

「突然死」とは世界保健機関(WHO)の定義によれば、「発症から24時間以内の予期せぬ内因性(病)死」です。

交通事故の死亡者数が年間約5千人、年間の自殺者数が約2万人ですから、約7万人というのがいかに大きな規模ということがわかります。毎年約7万人の人が予期せず突然亡くなっているというのはショッキングな事実です。

心臓突然死の原因となるのは心筋梗塞、心筋症、狭心症などの心臓病が中心です。心臓病以外にも、くも膜下出血や急性大動脈解離、エコノミークラス症候群などの病態も心臓突然死の原因になります。

心臓病が主な原因と聞くと、心臓突然死は「お年寄りに起こるもの」というイメージを抱きがちです。確かにその通りなのですが、ではお年寄り以外には起こらないかというとそんなことはありません。

心肺機能停止傷病者全搬送人員のうち、年齢区分別件数/消防庁救急企画室

上図は心停止で救急搬送された人の年代別データです。一番多いのは70〜80代ですが、60代以下の各年代でも突然の心停止が起こっていることがわかります。若年層でも心筋梗塞などは起こり得ますし、18歳以下ではスポーツ中に起こる心臓震盪も心臓突然死の原因になります。

心臓突然死は若い世代にとっても無関係ではないのです。

心臓突然死の直接の原因となる心室細動

心臓突然死の原因となる病態は様々ですが、直接的な原因となるのは「心室細動」が一番多いと言われています。「心室細動」とは、血液を心臓から送り出す心室がブルブルとけいれんして、血液を送り出すことができなくなる不整脈の一種です。

心筋梗塞などの心臓病も最終的には心室細動を引き落こして心停止に至るケースが多く、運動中にボールや体の接触で心臓に衝撃を与えられて起こる心臓振盪も心室細動を引き起こします。

心室細動に陥ると血圧が急速に低下してしまい、脳や肺などの臓器に血液が送られなくなってしまいます。その結果、3秒でめまい、5秒で意識不明、約10秒で呼吸停止となってしまいます。何も対処しなければ心臓が完全に停止して死んでしまいます。このように心室細動は発症からわずか数分で死に至る最も恐ろしい不整脈なのです。

さらに恐ろしいのは心室細動がいつ、どこで起こるのか予測することはできないということです。心臓病を患っている人なら普段から注意できるでしょうが、100%防ぐことはできません。もともと普通の人よりも心室細動が起きる確率は高いわけですからね。

ましてや心臓病であっても自覚症状のない場合や、急に心臓振盪に陥った場合には予測することはまず不可能です。

このように心臓突然死の原因となる心室細動は、予測ができず、数分で死にいたるので対処も難しいのです。

救命率は1分で10%低下する

心室細動の唯一の治療法がAEDなどの除細動器で電気ショックを与え、細かい震えを強制的にストップさせて、正常な拍動を再開させることです。これを除細動といいます。

しかし、除細動も心室細動の発症から数分以内に行わなければいけません。心臓が完全に止まってからでは手遅れになりますし、心室細動で血液が脳に供給されない時間が長ければ、脳が深刻なダメージを受けてしまうからです。

心室細動の救命率は時間が1分経過するごとに10%下がると言われています。ということは5分経過すると助かる確率は半分に、10分経過するとほとんど助からないということになります。

しかし、逆に考えれば、早い段階で除細動ができれば、高い確率で救命できるということでもあります。心室細動への対処はいかに早い段階で除細動できるかが重要になるのです。

救急車を呼んでも間に合わない

では、現実に早い段階で除細動ができているのでしょうか?

一番理想的なのは、早い段階で119番通報し、救急隊が除細動を行うことです。しかし、119番通報を受けてから救急隊が現場に到着するまでの時間は、平成28年(2016年)では全国平均8.5分となっています。経過時間が8.5分では救命率はかなり低くなってしまいます。

上図のように救急車の到着所要時間は年々長くなる傾向にあります。理由としては高齢化の進行で高齢者による通報が多くなっていること、軽症でも通報する事例が増えていることなどが挙げられます。

救急隊の到着所要時間が10分近い現状では、救急隊にだけに頼ることはできません。下図のように、救急隊による心肺蘇生の開始時間が10分以上になると生存率が低下することが消防庁の統計でも示されています。

 

一般市民による除細動は救命率が高い

このように心臓突然死に対しては救急隊だけで対処することは不可能です。救急隊の到着よりも早く除細動を行う必要があります。

そこで具体的な施策として注目されたのが、一般市民による除細動です。心停止の現場に居合わせた一般市民が119番通報するだけでなく、AEDを使用して除細動を行えれば、救命できる確率は高くなります。

実際のデータでも、救急隊が除細動を行なった場合の社会復帰率は21%だったのに対して、一般市民が除細動を行なった場合の社会復帰率は45%となっています。救急隊の到着を待つよりも一般市民が除細動を行なったほうが2倍以上救命率が高いのです。

救急・救助の現況(平成29年版)/消防庁より作成

心臓の障害を原因とする(心原性)心肺停止傷病者のうち、一般市民が目撃した例は平成28年(2016年)では25,569件でした。そのうち一般市民が除細動を行なったのは1,204件、全体の4.7%にとどまっています。心肺停止を目撃した一般市民のうち4.7%しか除細動を行えていないということです。

この4%という数字を伸ばすことができれば、それだけ心臓突然死で亡くなる人を減らすことができます。実際にこの4.7%という数字も過去からみれば大いに伸びているのです。平成19年では1.5%だったものが10年で3倍になっています。

救急・救助の現況(平成29年版)/消防庁より作成

今後も取り組み次第では、一般市民による除細動を実施する率を高めていくことができるはずです。

一般市民による除細動にはAEDが必要

一般市民が除細動を行うためには次の二つのが必要だと考えられます。

  1. 一般市民が心肺蘇生法を習得すること
  2. PADが適切に配備されること

胸骨圧迫や人工呼吸などの心配蘇生法だけでは心室細動から回復させることは難しいですが、心停止の状態でも脳や他の臓器に血液を供給し続けることはとても重要です。そうすることで救急隊やAEDの到着まで傷病者の延命を図ることができます。

PADとは「public access defibrillator」の略で、一般市民がいざというときに使用できるAEDのことです。医師や救急救命士が使う医療従事者用の除細動器と区別して用いられる用語です。

心室細動はいつ襲ってくるのか予想できません。ですから、いざという時に偶然居合わせた一般市民が除細動を行うためには、あらかじめAEDが様々な場所に設置されている必要があります。これが民間でAEDの設置が啓蒙・普及されている理由です。

まとめ

以上、AEDが必要とされている背景についてまとめてみました。

大切なことをまとめると以下のようになります。

  • 心臓突然死で年間7万人が亡くなっていること
  • それはいつ起こるか予測不可能なこと
  • 若い世代も無関係ではないこと
  • 心室細動の唯一の治療法はAEDによる除細動であること
  • 一般市民による除細動は救命率が高いこと

AEDが急速に普及している背景には、それが心臓突然死の主な原因となる心室細動への唯一の治療法だということがあります。

それにしても心臓突然死で年間7万人が亡くなっているのいうのはすごい事実ですね。しかし、こうしたことも十分に周知されているとは言えません。まだまだ心臓突然死や心肺蘇生法、そしてAEDのことを知らない人は大勢います。

心臓突然死で年間数万人が亡くなっていること、それを防ぐにはAEDが有効であること、こうしたことだけでもより多くの人が知るようになれば、それだけ一般市民による除細動率も向上するはずです。







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