AEDと心肺蘇生の基礎知識

AEDの機能とは?心肺蘇生法(一次救命処置:BLS)の手順も紹介

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「AEDの操作方法」と聞くと難しそうなイメージを持ってしまいますよね。しかし、操作方法を知らない一般市民でも使えるように、AEDの操作方法は至ってシンプルになっています。

以下ではAEDの使用方法も含めた心肺蘇生法についてまとめてみました。心肺蘇生法の理解を助ける動画や資料・書籍も紹介しているので参考にしてみてください。

AED

AAIREY / Pixabay

AEDの機能

現在、複数のメーカーがAEDを製造していますが、機能や操作方法はほぼ統一されています。

AEDの主な機能は以下の4つになります。

1)音声ガイダンス
2)心電図解析
3)除細動(電気ショック)
4)胸骨圧迫サポート

1)音声ガイダンス

AEDの操作方法を知らない人でも問題なく使用できるように、電源を入れるとAED自身が音声で指示を出してくれます。そのため、AEDの操作方法を詳しく知らなくても、「心停止の場合にはAEDを使用すること」を知っていればいいのです。

耳が不自由な人が使用する場合や、周囲の騒音が大きくて音声が聞こえにくい場合のために、液晶画面で文章による指示が表示される機種もあります。

2)心電図解析

AEDの電源を入れて、傷病者の胸に電極パッドをはりつけるとAEDが自動で心電図解析を行ってくれます。この心電図解析によって「除細動(電気ショック)が必要かどうか」をAEDが判断してくれるのです。

「心電図解析を行うこと」「除細動が必要かどうか」は音声ガイダンスでAEDが教えてくれます。

「除細動」とは?
突然の心停止の多くは、心臓が細かく震える「心室細動」が原因となっています。「心室細動」に陥っている心臓を正常な働きにもどすには、電気ショックを与えるがあります。このように電気ショックで「心室細動」に陥っている心臓を正常な拍動にもどすことを「除細動」といいます。
AEDの正式な名称は「自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)」で、まさしく「除細動(Defibrillation)」のための機械なのです。

3)除細動(電気ショック)

心電図解析の結果、「除細動が必要」とAEDが判断した場合には、AEDが音声で教えてくれます。その後、自動的に電気ショックのための充電が開始されます。充電が完了すると「電気ショックのボタンを押してください」と音声で指示してくれます。除細動が必要な場合にのみ充電されるので、必要がないのに除細動してしまう危険がありません。

指示に従いボタンを押すと、除細動が実行されます。

その後、だいたい2分おきに自動的に心電図解析を行ってくれます。まだ「除細動」が必要な場合には、1回目と同様に音声で教えてくれます。

4)胸骨圧迫サポート

AEDは単独で使用するのではなく、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を中心とした心肺蘇生法の一環として使用されます。そこでAEDの機種によっては、音声等で胸骨圧迫をサポートしてくれるものがあります。

ほとんどはテンポよく胸骨圧迫が行えるようにリズム音が出る程度ですが、胸骨圧迫の強さも感知して指示してくれる機種もあります。

以上のように、AEDは操作方法を知らない人でも使えるようにつくられています。基本的にはAEDの音声ガイダンスに従えば問題ありません。

しかし、心停止には「AEDを使用すること」とともに、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と中心とした心肺蘇生法の実技も必要になります。AEDはこちらについても指示を出してくれますが、実技を伴うため、やはり事前に習得しておくのがベストです。

以下で心肺蘇生法の手順についてまとめてみました。

心肺蘇生法(一次救命処置)の手順

心肺蘇生法は現在では国際的な基準が設けられており、有効な方法論が確立されています。日本では日本蘇生協議会(JRC)が心肺蘇生法のガイドラインを作成しており、最新版が「JRC蘇生ガイドライン2015」として発表されています。

日本国内ではこの「JRC蘇生ガイドライン2015」が心肺蘇生法の基準となっていて、消防署などで受講できる救命講習はもちろんこのガイドラインに基づいていますし、現在販売されている日本国内のAEDもこのガイドラインに沿って設計されています。

「JRC蘇生ガイドライン2015」では一般市民が行う心肺蘇生法を一次救命処置(BLS : basic life support)と呼んでいます。この一次救命処置の手順をまとめると以下のようになります。

  1. 安全を確認する
  2. 反応を確認する
  3. 応援を呼ぶ・119番通報・AEDの手配
  4. 呼吸を確認する
  5. 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
  6. 可能であれば人工呼吸を行う
  7. AEDを使用する
  8. 救急隊が到着するまで心肺蘇生を継続する

1. 安全を確認する

誰か倒れている人(傷病者)を見かけた場合、まず周囲の安全を確認します。例えば車にはねられた人を助けようとしても、車の往来がある状況では助けようとする救命者自身も負傷して、二次災害に発展する可能性があります。

自分自身も危険にさらされる状況ではないか、安全に心肺蘇生が行える場所なのか、判断することが心肺蘇生の最初の手順になります。

2. 反応を確認する

傷病者に声をかけたり、肩を叩いたりして、反応があるかどうかを確認します。それらしい反応がない場合は「心停止の可能性がある」と判断して、周囲に助けを求めて、心肺蘇生法を行います。

3. 応援を呼ぶ・119番通報する・AEDの手配

<応援を呼ぶ>

心停止に対しては救命処置をどれだけ早く行えるかが重要になってきます。救命処置が1分遅れるたびに、助かる確率は10%低下すると言われています。単純計算すると10分過ぎるともはや助かる見込みはなくなるのです。

救命処置は役割分担したほうが、素早く行えます。また、自分よりも心肺蘇生に詳しい人(医療従事者など)が来てくれる可能性があります。

まずは「人が倒れています!誰か来てください!」と応援を呼びましょう。

<119番通報する>

応援が来てくれた場合には「119番通報してください」と依頼します。自分一人の場合は自分で通報しましょう。

119番通報すると救急車を要請できるだけではなく、通信指導員が電話ごしに指示を出してくれます。周囲にAEDが見当たらない場合には、最寄りの場所を教えてくれる可能性があります。

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<AEDの手配>

応援が来てくれた場合には1人に「AEDを持って来てください」と依頼します。自分一人の場合には、AEDの場所が分かっていてすぐに持って来れそうなら手配するべきですが、場所が分からない場合はその場にとどまり心肺蘇生を優先させます。

4. 呼吸を確認する

胸と腹部を観察して、呼吸の有無を判断します。胸と腹部が規則的に動いていれば。「呼吸あり」と判断します。動きがなければ「呼吸なし」と判断して、心肺蘇生法を実施します。

この際、死線期呼吸に注意します。死線期呼吸とは心停止直後に見られるしゃくり上げるような呼吸音を伴う動作です。一見呼吸のように見えますが、実際には呼吸をしていません。ですから少しでも呼吸が変なら、「呼吸なし」と判断することが重要です。

呼吸の確認に10秒以上かけないことも重要です。呼吸がなく心停止している場合には、この10秒間も救命の確率が低下していることになります。判断に迷う場合は「呼吸なし」と判断しましょう。

5. 胸骨圧迫(心臓マッサージ)

「呼吸なし」と判断したら、人為的に心臓を動かし、血液を循環させて脳や臓器に酸素を供給しなければいけません。そのための具体的な方法が胸骨圧迫(心臓マッサージ)です。

一般的には心臓マッサージと呼ばれている方法ですが、実際には胸骨という骨を押す(体重をかける)ことでその下にある心臓も圧迫するので、現在では動作をよりイメージしやすい胸骨圧迫という名称が使用されています。

胸骨は胸の真ん中にある縦長の骨です。肺を取り囲む肋骨がそこから左右に広がっています。

胸骨圧迫の場所は胸骨の下半分になります。脇の下に手を入れて、そこから真横に胸の真ん中までずらすと簡単に特定できます。そこに左右の手のひらを重ねて、自分の体重をかけてリズミカルに圧迫と力の解除を繰り返します。

胸骨圧迫のポイントは強く・速く・絶え間なくです。
強さは成人の場合は胸が5cm沈む程度、子供(小児)の場合は胸の厚さの1/3沈む程度。
速さは1分間に100〜120回のテンポです。
「絶え間なく」というのは、できる限り胸骨圧迫を中断しないということで、やむもえず中断する場合は10秒以内にとどめます。

心臓の代わりに血液を全身に送り出すのですから、かなりの力が必要になります。「肋骨が折れてしまうのではないか?」と心配になりますが、実際によく折れるそうです。むしろ肋骨が折れるぐらいの力を意識した方がいいでしょう。

6. 可能であれば人工呼吸を行う

以前は、人工呼吸は胸骨圧迫(心臓マッサージ)と組み合わせて行うように指導されていました。しかし「JRC蘇生ガイドライン2015」では、人工呼吸の訓練を受けていなかったり、傷病者の口に触れることに抵抗がある場合は、人工呼吸は省略して、胸骨圧迫のみを行うように指導されています。

このように指導される根拠の一つは、胸骨圧迫のみを実施した場合でも、人工呼吸と胸骨圧迫を組み合わせた場合に比べて、救命率はほとんど変わらないという調査結果が出ていることです。心停止の直前まで呼吸していたのであれば、血液中にまだ酸素があるので、人工呼吸をしなくても血液を循環させるだけで、脳や臓器に酸素が行き渡るからだと考えられています。

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もう一つの理由は、人工呼吸の間にも胸骨圧迫は中断されてしまうので、血液の循環が止まってしまうためです。そのため、1回の人工呼吸にかける時間は10秒以内だとされています。十分な訓練を受けていない人が手間取りながら人工呼吸をしても、胸骨圧迫の中断時間をのばしてしまう可能性が高くなります。それよりも胸骨圧迫のみに専念した方が救命率は高くなるということです。

ただし、窒息した場合や溺れた場合、また傷病者が子供の場合は、人工呼吸を行うべきだとされています。これらの場合には血液中の酸素が不足していると考えられるからです。

人工呼吸を行う場合には、胸骨圧迫30回に対して、人工呼吸2回の割合で行います。

7. AEDを使用する

AEDが届けば、すぐにAED使用の準備を始めます。記事冒頭で紹介したように、基本的にはAEDの音声ガイダンスに従います。

注意すべき点はAEDの準備中などでも、できるだけ胸骨圧迫を中断させないことです。電極パッドを貼る最中でも、別の人が胸骨圧迫を続けるべきです。

除細動(電気ショック)後には、ただちに胸骨圧迫を再開します。心電図解析と充電の最中にも胸骨圧迫は中断され、血液の循環が止まっているためです。また、電気ショック後に胸骨圧迫をするほうが心臓の拍動が再開しやすくなります。

AEDが「除細動は必要ない」と言った場合も、胸骨圧迫を再開します。これは「除細動をしても心拍が回復しそうにない」という意味で、「救命処置が必要ない」という意味ではないからです。

8. 救急隊が到着するまで心肺蘇生を継続する

救急隊が到着するか、傷病者の意識が回復するまで、胸骨圧迫・人工呼吸・AEDの使用を継続します。意識が回復しても、また心停止する可能性があるので、AEDの電極パッドははがさずにそのままにしておきます。

胸骨圧迫は想像以上に体力を消耗するので、応援が来てくれた場合には2分を目安にして交代しましょう。自分一人の場合には、疲れる前に10秒以内の休憩を挟みましょう。披露のために10秒以上中断してしまう事態の方を避けるべきです。

救急隊が到着するまで、できるだけ中断を少なくして胸骨圧迫を絶え間なく継続することが重要です。

心肺蘇生法を動画で確認する

以上が「JRC蘇生ガイドライン2015」において一次救命処置(BLS : basic life support)と呼ばれている心肺蘇生法です。

一次救命処置の手順は下記のALSOKの動画でも確認できます。心肺蘇生法の手順が簡潔にまとめられています。

この動画では死線期呼吸の映像も確認でき、胸骨圧迫の悪い例なども紹介されています。また、AEDの電極パッドを傷病者に貼り付ける際にも、もう一人が胸骨圧迫を継続している点なども参考になります。

手軽に一次救命処置を確認できる素材として活用してください。

救命の連鎖

ここまで一次救命処置の手順を見てきましたが、「JRC蘇生ガイドライン2015」では、心停止に陥った人を社会復帰に導くためには、この一次救命処置をふくめた4つの輪の連鎖、「救命の連鎖」が必要であると提唱されています。

「救命の連鎖」

  1. 心停止の予防
  2. 心停止の早期認識と通報
  3. 一次救命処置(心肺蘇生とAED)
  4. 二次救命処置と心拍再開後の集中治療

「心停止の予防」とは事故やけがを予防して心停止に陥る状況を未然に防ごうということです。急性心筋梗塞や脳卒中などの生活習慣病も心停止の主な原因となるので、これらの予防も重要です。

2番目の「心停止の早期認識と通報」は倒れている人をみたら、ただちに119番通報して、周囲に助けを求めることです。「これは心停止かもしれない」という認識が心肺蘇生のスタートになります。

「一次救命処置」は先ほど紹介した一般市民が行うべき心肺蘇生法です。

最後の「二次救命処置と心拍再開後の集中治療」は、救急隊が到着した後の医療従事者による救命処置と、その後の社会復帰のための治療に当たります。

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「一次救命処置」を行うことも重要ですが、それ以前の「普段の生活から心停止を予防すること」「心停止は突然起こるという認識を持つこと」「心停止が疑われる状況ではすばやく通報すること」という部分も大事だということですね。

また、4つの連鎖のうち、最初の3つは医療従事者ではなく一般市民が行うものになります。緊急を要する心停止の場合には、救急隊の到着や病院での治療の段階では手遅れになっている可能性が高くなります。一般市民が通報・心肺蘇生・AEDの使用を実行できる体制が普及すれば、心停止の救命率は格段に向上します。そのため、民間での心肺蘇生法とAEDの普及が重要になってくるのです。

心肺蘇生法をより詳しく知るには

「JRC蘇生ガイドライン2015」はJRC(日本蘇生協議会)のHPで公開されています。

JRC蘇生ガイドライン2015/JRC

ただ、「JRC蘇生ガイドライン2015」は専門家向けに作られているので、一般市民には理解しにくい部分があります。一般市民向けには、日本救急医療財団が監修した「救急蘇生法の指針2015(市民用)」が簡潔でわかりやすいのでオススメです。こちらは厚生労働省や消防庁のHPでPDF形式で公開されています。

「救急蘇生法の指針2015(市民用)」公開ページ/厚生労働省

「救急蘇生法の指針2015(市民用)」は書籍としても販売されています。AEDといっしょに手元においておくと便利です。書籍版にはQ&A形式で解説が載っている「解説編」がオススメです。

救急蘇生法の指針〈2015〉市民用・解説編

まとめ

実際の救命処置の場面では、「AEDの使用方法がわからない」という事態になる危険はほとんどないでしょう。電源をオンにすれば、AEDが音声で指示を出してくれます。

しかし、胸骨圧迫についてはその方法を事前に知らずに行うことは難しいでしょう。AEDは操作方法を知らなくても、AEDの指示に従って使用できますが、胸骨圧迫を行うには事前にその実技を習得している必要があります。

現在では上記の動画やPDFなどで、胸骨圧迫を含めた一次救命処置の手順について学ぶことができます。

実技講習も、消防署や日本赤十字社が開催していますので、いざという時のために参加を検討してみてください。







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