AEDを導入する前に考えること

AED導入を検討する際に考えるべきポイントとは? 台数・設置場所・維持管理コストなど

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いざAEDを導入しようとする時には、いろいろな懸念が出てきます。

「本当に導入すべきなのか?」
「何台導入すればいいのか?」
「どの機種を導入すればいいのか?」などなど。

こうした懸念に自力で答えを出すのは大変なことですが、現在ではAEDの設置・配置に関するガイドラインも出されており、それらを参考にすることができます。

以下では、導入前に検討すべきポイントを解説してみました。

TeroVesalainen / Pixabay

AED設置に関するガイドライン

AEDの設置に関する基準・ガイドラインとしては日本循環器学会AED検討委員会と日本心臓財団が作成した「AEDの具体的設置・配置基準に関する提言」があります。

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現在、日本国内では多くのAEDが設置されていますが、それらが戦略的・効果的に配置されていないのではないかと指摘されています。この問題に対して、「AEDの具体的設置・配置基準に関する提言」ではAEDの設置が推奨される施設、施設内での効果的なAED設置場所などの基準を提示してくれています。

以下ではこの提言に沿って考慮すべきポイントを解説しています。

AEDを導入すべきかどうか

まず「本当にAEDを導入すべきなのか」という点です。

それぞれの施設でAED導入の検討を始めるきっかけは様々だと思いますが、「本当に導入するべきなのか?」というポイントが一番最初に出てくるはずです。

「AEDの具体的設置・配置基準に関する提言」では様々な推奨がなされていますが、AED設置基準についてはおおむね以下のように推奨されています。

  1. 5年に1度以上の心停止が想定される
  2. 常に成人が250名以上いる(会社を含む)
  3. 近くに医療施設がなく、救急搬送に時間がかかる僻地

「5年に1度以上の心停止が想定される」というのは、例えば過去5年間に心停止が起こった事例があるならば当てはまると考えていいでしょう。また会社の健康診断で狭心症などの疑いがある人が多数いる場合なども、今後心停止が起こりうる可能性があると考えていいでしょう。

「常に成人が250名以上いる」というのはそのままですね。大勢の成人がいる施設では、統計的に心停止の発生する確率が高まります。

LoggaWiggler / Pixabay

以上2点は比較的人口が密集しているところが当てはまる基準ですが、最後の1点は過疎地に当てはまります。

「近くに医療施設がなく、救急搬送に時間がかかる僻地」は、万が一、心停止になった人がいても医療的なインフラが未整備で救命される可能性が低くなります。公平性の観点から、こうした場所にもAEDが配備されるべきだと推奨されています。医療的な僻地かどうかを具体的に判断するには、「最寄りの医療機関との距離」「最寄りの消防署との距離」で判断できます。

自分たちの施設だけのためでなく、近隣で心停止が起こっても対応できるようにとAEDを導入する企業もあります。

日本救急医療財団の全国AEDマップでは、日本全国のAEDのおよそ半数が登録されています。マップで探して近隣にAEDが設置されていないのであれば、積極的にAEDを導入されることをおすすめします。

何台置くべきか?

「1つの施設に1台でいいんじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、AEDを導入する以上、実際に救命できる体制にしなければ意味がありません。

心停止の原因となる心室細動は除細動が1分遅れるごとに、救命率は10%低下すると言われています。AEDを導入していても、設置場所が取りに行くのに数分かかる場所であれば、救命は難しくなります。広い施設には複数台のAEDが必要です。

「AEDの具体的設置・配置基準に関する提言」では、心停止から5分以内に除細動が可能な配置として現場から片道1分以内の密度でのAEDの配置を推奨しています。

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片道1分の距離は時速9kmの速歩きで移動すると150mになるので、300m間隔にAEDが1台必要ということになります。この基準に従えば導線が全長900mの施設にはAEDは3台必要です。

これもあくまで基準なので、実際に現場でシミュレーションして考えることが重要です。心停止が起こりそうな場所を想定して、どこにAEDがあれば5分以内に除細動が可能なのか考えてみるのです。

実際に導入可能な台数は予算によって決まってしまいますが、あらかじめ理想としては何台必要か把握しておくことは大切です。AEDは機種によって値段も異なるので、機種と購入先を吟味すれば、理想の台数を導入できるかもしれないからです。

どこに配置するのか?

「施設内のどこに配置するのか?」というのも重要なポイントです。

これについても、「AEDの具体的設置・配置基準に関する提言」での心停止から5分以内に除細動が可能な配置現場から片道1分以内の密度という基準を参考にしましょう。そして実際に施設の特性を考慮してシミュレーションしてみることが重要です。

理想の設置台数を導入できない場合も多いと思いますが、その場合は設置できる台数でできるだけ効果が高い配置になるように工夫しましょう。

注意すべきなのは、安易に建物の入り口やビルの1階に置かないことです。建物の奥まった場所や上階で心停止が起こる可能性があるからです。高層ビルであれば中間の階など、施設のどこからでもアクセスしやすい場所に設置するのが理想です。

設置しても施設の利用者が常にAEDの設置場所を覚えているとは限りません。また緊急時には外部の人間がAEDを探しに来る可能性もあります。そんな場合のために、AEDの設置場所を示す標識を適宜配置したり、高層ビルではどの階にAEDが設置されているのか案内図に示すなどの工夫があるといいでしょう。

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どの機種にするべきか?

「どの機種を選ぶか」というのも大いに悩むところです。

機種の選定は、台数や設置場所、想定される対象者・状況、予算など、もろもろの条件が定まってからの方がいいでしょう。

AEDは高度管理医療機器であり、厚生労働省が定めた基準をクリアしなければ販売できません。ですから国内で販売されている機種に関しては、すべて一定の基準を満たしているので、基本的な機能面では大きなハズレはないと考えていいでしょう。

しかし、機種によって特性や微妙な機能が違って来ることも事実です。また購入価格や消耗品のコストも変わってきます。複数の機種の中から最適なものを選ぶのは重要なことです。

下記の記事では国内主要機種の比較を行っているので、参考にして見てください。

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小児モードは必要か?

AEDの小児モードとは、未就学児用に除細動の電気ショックを弱めたモードのことです。AEDにおける「小児」とは6歳未満の未就学児のことを指すので注意が必要です。

国内一般向けAEDのほとんどの機種では小児モードに対応しています。小児モードには、スイッチ類で通常モードと切り替える「スイッチ式」と、電極パッドを小児用に切り替える「パッド交換式」の2種類があります。

「スイッチ式」では本体のみで切り替えが可能ですが、「パッド交換式」では余分に小児用パッドが必要になります。つまりコストの問題になって来るのです。

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ビルのオフィスや工事現場など、6歳未満の子供が心肺停止になる可能性がほとんどない施設では、小児モードを考慮してくてもいいでしょう。

一方で、店舗やビルの1〜3階などの外部の不特定多数が利用できる場所では、万が一を考えて小児対応の準備をしておくべきです。未就学児が使用する可能があるホテルやレジャー施設、マンションなどでも小児対応が望ましいです。

最悪の場合、未就学児にも通常の電気ショックを用いても構わないとされていますが、迷う場合は「スイッチ式」の小児対応機種を選んでおけば無難です。

1台を何年使用するのか?

AEDには保証期間があります。この期間を過ぎてしまうとメーカーからの保証がなくなりますから、保証期間をAEDを使用できる期間だと考えて、保証期間ごとに買い替えて行くのが賢明です。

すると、保証期間の年数ごとに買い替えの予算を考えないといけません。

数年ごとに買い替え費用が発生するのは金銭的には痛手ですが、消耗品の交換なども保証期間ごとに区切りをつけられるという利点もあります。長期的な運用計画や予算を立てやすくなるのです。

保証期間は機種によって異なります。民間向けAEDでは5年というものが多いですが、中には8年という機種もあります。選んだ機種の保証期間によって、AEDの長期的な運用計画は変わってくるので、機種を選ぶときにはこの点も注意しましょう。

維持管理コストはどれぐらいか

AEDの設置には初期費用の他に、以下のような維持管理の費用もかかってきます。

  1. 期限の切れた消耗品の交換代
  2. 除細動実施後の電極パッド交換代
  3. 予備の電極パッド代

1. 期限の切れた消耗品の交換代

AEDの電極パッドとバッテリーはいずれも使用期限のある消耗品になります。どちらも医療機器の部品ですので1万円以上してきます。ほとんどの機種の消耗品の使用期限はAED本体の保証期間よりも短いので、保証期間内での消耗品の交換が必要です。こうした交換のコストはあらかじめ計算することが可能です。

2. 除細動実施後の電極パッド交換代

電極パッドは使い捨てなので、除細動が行われる度に交換が必要になります。電極パッドとバッテリーが一体型の機種はまるごとの交換になります。こちらのコストも、心停止の発生頻度を想定することで予想することができます。

3. 予備の電極パッド代

電極パッドは使い捨てですので、一度除細動を行なった後には廃棄しないといけません。その後、時間をおかずに再び除細動の必要が出た場合、予備の電極パッドがなければ対応できなくなります。電極パッドを注文してから届くまでには日数がかかるので、あらかじめ予備を用意しておく必要があります。

消耗品のコストは消耗品自体の寿命よって変わってきます。例えば本体の保証期間5年の機種の場合、バッテリーの寿命が4年だと交換1回分の費用がかかりますが、バッテリーの寿命が5年だと交換しなくて済むのです。

メーカーや機種によっては、消耗品代がお得になるサービスもあります。コスト面は本体価格だけでなく、消耗品の費用も考慮に入れましょう。

販売業者に相談する

以上、AED導入の際に考えるべきポイントを挙げてみました。これらのポイントを軸に考えていけば失敗することは少ないと思います。

しかし、自分たちだけで自信を持って進めらるという人は少ないはずです。判断に迷った時は相談に乗ってくれる販売業者を探すのが一番です。

AEDの導入事例についての知識と経験を一番持ってるのは、AEDの販売業者です。

AEDは買い替えを繰り返して永続的に設置することになるので、今後とも相談できる販売業者を見つけることは重要なことです。







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