AED導入の形態には大きく分けて、購入とレンタルの2つがあります。
どちらにもメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶかによって、価格だけではなく、機種の選定や保守管理にも影響が出てきます。
導入時の条件はケースによって異なってくるので、2つの違いを理解して、より適している方を選ぶことが重要です。
以下では購入とレンタルとのメリット・デメリットを比較して、ケースごとにどちらがお得なのかまとめてみました。
リースについて
レンタルとよく似た形態にリースがありますが、現状ではレンタルの方がメリットが大きいので、ここでの比較ではリースは除外しています。
レンタルとリースの違いについては下記の記事を参考にしてください。
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購入とレンタルのメリット・デメリット
購入とレンタル、それぞれのメリットとデメリットをまとめてみると下記のようになります。
購入のメリット
- トータルの費用が割安
- 機種が選びやすい
- 新品
- 複数台で消耗品を共有できる
- 30万円未満なら全額を経費にできる
購入のデメリット
- 支払いが一括
- 30万円以上なら資産計上で経理処理が面倒
- 消耗品交換費用が別料金
- 保守管理をしないといけない
レンタルのメリット
- 支払いの平準化
- 期間が自由に選べて、短期利用に向いている
- 消耗品交換費用も料金に含まれている
- レンタル会社がメンテナンスしてくれる
レンタルのデメリット
- 長期利用ではトータルで割高
- 機種が選びにくい
- 新品ではないかもしれない
1. 料金
レンタル料金には消耗品交換代も含まれている場合が多いので、同じ期間使用するなら購入よりもトータルでは高くなります。
レンタル料金には、消耗品の定期交換だけでなく、AED使用時のパッド交換代も含まれているケースがあります。AEDの使用頻度が高ければ、電極パッド交換代が一律になりお得です。しかし、AEDの使用頻度が低いのであれば、余分な費用を負担していることになります。
2. 支払い
購入は基本的に一括支払い、レンタルは平準化されて月々の支払いになります。
3. 期間
レンタルでは使用期間を自由に選べるので、短期的な利用ではレンタルの方が理にかなっています。
ただし、数年単位の期間になってくると購入の方がお得な場合が多いので、両方の見積もりを比較した方がいいでしょう。
購入の場合には、選んだ機種の保証期間を使用期間だと考えていいでしょう。
4. 機種の選択
レンタル会社は複数の種類の機種を所有していることは少ないので、レンタルでは機種が選べない場合が多くなります。
レンタル会社によってサービス内容も違うので、「サービス内容は気に入ったけれども、希望の機種ではない」という場合もあり得ます。
購入の方が機種を選びやすくなります。
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5. 新品かどうか
レンタルでは新品でない可能性があるので、長期レンタルの場合には貸出機器の使用可能年数や代替機の有無、メンテナンス体制を確認する必要があります。
購入の場合には当然新品になります。
6. 消耗品コスト
レンタルの場合には消耗品交換費用も料金に含まれている場合が多いので、消耗品の交換頻度が少ない場合には余分な費用を支払っていることになります。
逆に消耗品の交換が多いのならレンタルの方がお得になります。
購入の場合には消耗品コストは別途費用になりますが、複数台の予備パッドを共有して全体でのコスト抑えるなど、工夫することも可能です。
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7.保守管理
レンタルの場合はレンタル会社がAEDの点検や消耗品の管理を担当してくれる場合が多いです。
購入の場合には基本的に自分たちで管理する必要があります。
経理処理の違い
購入とレンタルでは経理処理の方法も異なってきます。
*表が途切れている場合は横スクロールして下さい。
形態 | 単価 | 処理方法 |
購入 | 30万円以上 | 資産に計上して減価償却 |
30万円未満 | 資産計上と経費計上が選択可能 | |
レンタル | - | 経費として計上 |
購入の場合、AEDの価格が30万円以上だと、資産として計上して減価償却をしなければいけません。減価償却上のAEDの耐用年数は4年になります。
ただし、価格が30万円未満の場合には全額を経費にすることが可能です。
レンタルの場合は、月々のレンタル料をそのまま経費として処理します。
経理上の経費イメージ
購入の全額経費計上、減価償却、レンタルの経理処理のイメージは次のようになります。
減価償却は定率法での計算です。
支払いと同様に経理上でもレンタルの方がシンプルに処理できます。
しかし、価格が30万円未満の購入の場合にも全額を経費としてシンプルに処理できます。決算調整で経費を計上したい場合など、こちらの方が便利な場合もあります。
デメリットを補うサービス
以上のように購入にもレンタルにも、メリット・デメリットがあります。
時系列で見ると購入やリースのデメリットを解消する手段としてAEDのレンタルが登場してきました(短期利用や料金の分割など)。
これはAEDを提供するサービスの進歩と言えますが、購入のほうでも従来のデメリットを補うサービスが出てきています。
1. カード払い
購入の場合、基本的には支払いは一括ですが、クレジットカード支払い対応の販売会社も出てきています。
カード払いなら分割が可能になる場合もあります。
2. 価格低下
数年前ならAEDは1台100万円近くしましたが、現在では20〜30万円まで価格が下がっています。
30万円未満の機種なら、面倒な減価償却をせずに全額を経費にすることが可能です。
3. 消耗品交換サービス
購入の場合でも、レンタルのように消耗品の交換費用が別途必要ない製品やサービスが出てきています。
例えばオムロンのレスキューハートには消耗品を無料で交換してくれる「AED安心パック」がついていますし、AEDコムのようにパッケーシで消耗品交換サービスを用意している販売会社もあります。
ケース別のおすすめ
購入とレンタル、それぞれメリット・デメリットを踏まえて、ケース別にどちらがおすすめなのか、まとめてみました。
1. 短期で利用したい
数日〜1年未満ならレンタル。数年単位なら両方の見積もりを検討。
短期の利用ではやはりレンタルの方がお得になります。
ただし、数年単位なら購入の方がトータルコストが安くなる可能性もあるので両方の見積もりを比較した方がいいでしょう。
2. 永続的に設置したい
コストを抑えたい場合は購入。
ただしAEDの使用頻度が高い場合にはレンタルのほうが消耗品コストは安くなる可能性があります。
3. 保守管理を委託したい
基本的にはレンタル。ただし、購入でも販売会社がサポートしてくれる場合がある。
レンタルでも個別にメンテナンスサービスの確認は必要です。
4. 経費で一括処理したい
価格が30万円未満の機種を購入すれば可能。
30万円以上だと資産になってしまいます。
5. 支払いを分割したい
基本的にはレンタル。
購入でもカード払い可なら分割払いができる可能性もあります。
6. 複数の機種から検討したい
購入のほうが選びやすい。
レンタルの場合は会社によって機種が決まってることが多いです。
7. 経費の計上を分割して抑えたい
購入、レンタルどちらでも可能。
購入の場合は減価償却することで経費は分割されて計上できます。価格が30万円未満でも減価償却は可能です。
レンタルの場合は、レンタル料がそのまま経費として処理されますが、使用中はずっとランニングコストがかかるということでもあります。
8. 複数台を導入したい
管理を簡略化したいならレンタル。費用を抑えたいなら購入。
複数台を導入する場合には、管理が大変になりますが、レンタルなら1台1台の管理を委託することができます。
しかし、その管理委託費用は台数分のレンタル料に含まれていることになります。
購入の場合には、複数台購入による価格交渉で大幅なコストダウンができる可能性があります。
保守管理を委託する上での注意
購入とレンタルの大きな違いにAEDの保守管理を委託できるかどうかがあります。
レンタルの場合には、AEDの保守管理はレンタル会社の負担になることが多いので、その点ユーザーは手間が省けます。
しかし、日常の管理をレンタル会社に任せっきりでは、いざという時にAEDを上手く使用できなくなる可能性もあります。例えば、自分では日常の点検をすることがないので、AEDの設置場所を忘れてしまうことも考えられます。
AEDの管理は面倒ですが、いざという時にAEDを使用する訓練の一部だとも考えれます。日頃からAEDを意識することで、緊急の場合でもスムーズにAEDを使用しやすくなるはずです。
レンタル会社にAEDの保守管理を委託する場合には、AEDを意識づける機会を別に検討することも必要です。「単にAEDを設置しているだけ」という姿勢は現状の課題として指摘されているところでもあります。
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まとめ
AEDの購入とレンタルはともに進歩していて、両方のサービスの内容は近づきつつあります。
ということは選択肢の幅が広がり、本当に重要な点で妥協しなくても済む可能性が高くなっているということです。
できるだけ、両方の見積もりをとって検討することをおすすめします。